ルーム貝

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「ヒロトのせいだぞ!?」  タクヤはヒロトに力強く人差し指を向ける。 「お前が最初鍵を開けたから、こんなことになったんだ!」 「はあっ!? お前が秘密基地にしようって言ったんじゃん!」 「そんなもん、お前が開けなきゃ言わなかったわ!」 「人のせいにすんなよ! タクヤってそーゆーとこあるよな! ルーム貝を見つけたのだってタクヤの方だろ!」 「全部俺が悪いんですかあ!? ヒロトだってノリノリで色んなもん持ってきただろうが!」  ふたりは罵り合う。お互いのせいにしている間は楽だった。怒りが恐怖を上塗りしてくれる。強烈な恐怖を中和するために、彼らはさらに相手を憎み合った。 「そんなんだから、テストで満点取れないんじゃないの!?」 「お前っ」  頬に衝撃が走る。タクヤに殴られるのは初めてのことだった。頭に血が上り、ヒロトも拳をぶつける。ふたりは殴り合いを始めた。  しかし、運動神経で劣るヒロトがタクヤに勝てるはずもなかった。やがて、動けなくなったヒロトを睨みながら、親友は吐き捨てるように言う。 「お前なんか、友達じゃない」  拒絶の言葉を投げられ、ヒロトは頭を動かして睨み返す。悔しさが血液を沸騰させるようだった。大事な親友だと思っていたはずなのに、今はボコボコにしてやることしか考えられない。  タクヤはひとりでもう一度、脱出しようと試みる。  ヒロトはそれを内心嘲笑っていた。馬鹿だこいつ、ふたりでも動かなかったのに、お前だけで動かせるもんか。  だが、その考えは外れていたらしい。 「えっ」  笑ってしまうほど簡単に、その鍵は動いたのだった。
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