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「うおっ!?」
彼はその貝を拾ってみた。見た目よりもずっしりと重い。見たことがないが、食べられる種類なのだろうか。
顔を近付け、匂いを嗅いでみる。磯の香りがした。一応、腐敗臭はない。魚介類のことはさっぱりだが、何となく新鮮そうだ。
中身を調べるべく、彼はそれを近くの岩に全身全霊で叩き付けた。
ギャッと荒々しい音が鳴り、岩に激突した貝は放物線を描いて砂浜に落下する。
「マジか、これでも割れねえの!?」
貝は出っ張りが破損したものの、無事だった。彼はショックを受けていた。これでも小学校・中学校と野球部でピッチャーを務め、肩には自信があったのだが、まだまだ鍛錬が足りないらしい。
「まあ、いいか!」
それよりも面白い土産ができた。彼は気を取り直し、その貝を片手に仲間たちの元へと戻る。どうやら火起こしに成功したらしく、うちわで風を送っている最中だった。
「ただいまー」
「おう、もう準備できたぞ!」
「ん? 何持ってんの?」
「なんか貝が落ちてたんだ。結構中身詰まってそうだぞ」
「ええ……? 食べて大丈夫なのかそれ? 貝毒ってのがあるらしいぜ」
友人のひとりが怪訝な顔をする。それに対し、彼はへらりと笑った。
「まーまー、とりあえず焼いてみんべ。ヤバそうなら捨てればいいしさ」
そう言うと、彼は網の中央にその貝を置いた。
「まあ、焼くだけ焼いてみるか」
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