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翌日、リュックを背負った彼らは、秘密の砂浜までやってきていた。
「あったあった」
「今は誰もいないぞ」
「オーケー」
周囲を確認したタクヤの合図で、岩陰に身を隠したヒロトはルーム貝の鍵を開ける。すると彼らの身体は、ちゅるりと隙間の中へ吸い込まれていった。
ルーム貝の中に入ったタクヤは、抱えていた段ボールを床に置く。
「っふうー! いやあ、二回目となると慣れたもんだな!」
「僕はまだ緊張してるけどね」
「まあまあ、とりあえず始めようぜ」
そう言うと、彼らは荷ほどきをしていく。座布団、漫画、家から持ち出したランタン、お菓子に缶コーラ。他にも何に使うのか分からないロープやハサミなど。空になった段ボールは、逆さにしてテーブル代わりにした。
ただそれだけだが、そこは立派なヒロトとタクヤの秘密基地となった。ふたりしか知らない、秘密の隠れ家。彼らはその甘美な響きに胸を満たしながら、さっそく座布団の上に座る。
「へへ」
何も言わず、ふたりは乾杯する。ごくごくと喉を鳴らしてコーラを飲む。なんてことのない普段通りのコーラが、こたえられない味だった。特別な場所で飲むジュースもまた、特別な飲み物となり得るのだ。
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