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授業中も、ヒロトの頭はルーム貝のことで一杯だった。
あんな不思議なものが存在するなんて。次は何を持ち込もうか。ああ、早く学校が終わってほしい。こうして座っているだけでもウズウズする。
教壇に立つ担任が、黒板に書いた数式を指差して言った。
「それでは、この問題分かる人ー?」
その声で我に返り、すぐさま答えを計算する。よし大丈夫、分かる。すでにこの範囲は予習を済ませてある。算数はヒロトの苦手な科目だから、意識して対策するようにしているのだ。
「じゃあ……ヒロトくん!」
言い当てられて一瞬動揺する。落ち着け、答えなら用意している。
「7.25です」
「正解!」
よかった、答えられた。安堵感が胸の奥から広がる。授業で急に当てられるのは大嫌いだ。指名されて何も答えられなかった時の、あの感じ。どうにも緊張してしまう。
担任はにっこりと笑い、チョークを走らせて別の問題を書き上げる。
「じゃあ、この問題は」
一気に胸が重くなる。まさか、連続で答えなければいけないのだろうか。まずい、まだ計算が追いついていない――頭の中が真っ白になってしまう。
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