雪の日の思い出

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 眠くて、ちゃんと目を開けられなかったから、ボクたちきょうだいをあたためてくれているのが、どこの誰なのかも、さっぱりわからない。  けれど、声は優しかった。 「まだ寝ていていいぞ。夜明けまでは、まだまだ長い。子どもは寝る時間だ」  ボクたちきょうだいに寄り添ってくれた誰かのふわふわの毛。  あたたかい。  石になっていない生き物が、ボクたち以外にもいた。  嬉しくて、涙がこぼれそうになったけれど、やっぱり眠くて、まぶたは開けられなかったんだ。 「四季が巡るならば、雪はやがてとけるものだが……常春のはずの世界にもたらされた常冬の呪い……か。太陽の力さえ戻れば……」  独り言のように静かな声で呟かれたその言葉を遠くに聞きながら、寝息をたてているきょうだいたちのように、ボクもいつしか深い眠りに落ちていた。
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