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「おーい、誰かいるかー」
大人の声がダンジョンにこだまする。いつの間にか出入口付近に大人が何人か集まっていた。大人が口々に人間の女性名を叫びだす。
娘の目が輝きだした。
「はーい」
大きな声で娘は答え、一目散に声のした方へと走っていく。ここから先は一本道、危ないものは何もない。
もう大丈夫だろう。私は、小さな体で懸命に走り離れていく娘の後ろ姿を眺めていた。
娘がピタッと足を止める。くるりと振り返った。
「あの、ありがとうございます」
私のやや右下に向かって娘はペコリとお辞儀をし、再び大人達のいる出入口へと走っていった。あそこまでやったら、さすがに気づくか。
遠く、出入口付近から歓喜の声が聞こえる。
……。
大きくなったら、またおいで。
好奇心旺盛で破天荒な君なら、もしかしたら本当の入口を見つけられるかもしれない。
人間達がダンジョンと呼んでいるここは玄関前のエントランスに過ぎない。ここより先には君達が今までに出会ったことのない未知で溢れた巨大な地下世界が広がっているんだ。
宝石の花畑、黄金の実のなる森、過去を写す湖、客人をもてなしたがる怪しい豪邸の住人、異形の者達が暮らす街、ここにしかいない動植物……悪戯好きな主が一生をかけて造り上げた奇天烈で不思議な世界だ。誰かが冒険するために造られた世界だ。
まさかここまで発見されないとは思わなかったが、君になら見つけられそうな気がするんだ。根拠はないけど、そんな気がする。
だからおいで。
今度はお友達でも連れて、歓迎するよ。
みんな、みんな待ってるよ。
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