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ずんずんと進んでいった娘は二手に別れた所でようやく立ち止まった。道の片方には予め私が『×』と印をつけてある。字が読めなくとも記号なら分かるはずだろう。こちらに進んではいけない。
娘は『×』と印を書いた道に進んでいった。何故だ、私の知らない間に×の意味が変わってしまったとでも言うのか?
それから数分進むと娘はごちゃごちゃとした機械に道を塞がれた。随分と昔に無力化された罠の仕掛け部分だが、どんな罠だったのかすっかり忘れてしまった。
とにかく大きくて空間一杯に機械が入り乱れている。どんなに娘がランタンを振り回し、諦め悪く探しても通り抜けられる道なんてない。早く引き返しなさい。
娘は機械の中に潜り込んで隙間を縫うように強引に進み始めた。何故だ、何故そこまでして進む。まさか引き返すという概念がまだない歳なのか?
無骨な鉄棒を潜り、張り巡らされたチェーンやベルトを避け、娘は機械の奥へ奥へと潜り込んでいく。よく見えない所まで行ってしまうと突然、機械がギギギと音を立てた。
ガリガリガリ……表面を覆っていた錆を引き剥がしながら機械が動き出す。無力化されていたのは表側にあるスイッチ部分だけだったようだ。
ガタンガタン、所々緩み壊れているそれは今にもバラバラに弾けとんでしまいそうな不安定な轟音を立て続ける。その間娘は床に這いつくばって必死の形相で耳を塞いでいた。近くで大きな歯車が回っている。娘よ、絶対に動いてはならない。
ようやく音が止まり、全身錆や土埃まみれになった娘がヘロヘロになりながら這い出てきた。体を振ったり叩いたりする度に娘の体から何かしらの煙が出る。
あれこれありながらも娘は無事に罠の仕掛け部分を通り抜けることができた。が、残念ながらその先はなく、ただの行き止まりだ。
諦めの悪い娘が再びランタンを振り回し、辺りを探る。すると行き止まりの壁に機械の点検用らしい小さな戸を発見した。あったのだが、この戸は重く子供の力ではびくともしなかった。極めて危険だが、あの機械を再び潜り戻るしかないのだ。
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