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娘は何故か、壊れて床に落ちているチェーンを拾い始める。何故かそれを戸にくくり、歯車に通し、やはり落ちていたワイヤーで何故か固定する。物凄く嫌な予感がする。
細い棒を拾い、機械の奥に差し込んだ。何をしている? 届かなかったらしく身を乗り出して一ヶ所を突こうとする。やめなさい、ママに危ないことはしてはいけないと教えられなかったのか?
機械が再び唸る。チェーンが回りだし、ベルトが高速回転し歯車が一つ一つ動き始める。戸にくくりつけられたチェーンはすぐにピーンと張り、メキメキと恐ろしい音を立て始める。戸が激しく歪む。
もはや開くというよりも引きちぎっているようだった。戸の取っ手もちぎれそうだ。歯車もグギギと異様な音を立て、いつ壊れてもおかしくないのに止まることなく回り続ける。
バァン、戸が吹っ飛んだ。勢いよく飛び、機械の一部にぶつかった。
慌てて避けた娘が転ぶ。その髪が、カタカタ動くチェーンに触れる。
……緊急停止装置が錆びついてなくてよかった。
力一杯停止ボタンを押すとギャガガと雄叫びのような異常な音を轟かせて、娘が大量の歯車の群れに引きずり込まれる前に止まった。
無理やり動きを止めたせいか機械の部品が耐えきれずに外れ、落ちた。部品が取れた部分が支えを失って崩れ、その反動でまた別な所が壊れた。
ボロボロと機械の一部と小さな部品が床に落ちる。娘にもいくつか当たったようだが幸い軽いものばかりだったようで大したことはなさそうだ。ただ、チェーンに触った髪は駄目みたいだ。
髪は激しく絡んでいて、ほどけないどころか娘自身が全く身動きが取れないようだった。二つ縛りの片方、必死にほどこうともがいているが、これはもう切るしか手はないだろう。
仕方がないので髪を少しずつ切ってやる。切るのは凄く疲れるし、たぶんちょっと引っ張られて痛いだろうが私がやらないとどうにもなりそうにない。
数分かかってようやく自由になった娘は右と左で長さの変わっていまった髪の長さを手で触って確認する。目からポロポロと涙が流れている。頭が残っているだけマシだと思え。
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