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■ 感想
音楽によってぐんぐん進められていくストーリーはスピード感があります。
やっぱりお気に入りは冒頭の『ベルボトムス』に合わせた強盗からの逃走シーン。カメラは銀行に入る男女を追わずに運転席に残ってイヤホンで音楽を聴く少年をとらえる。音楽に没入して体を動かす彼に「なにこれ?」と混乱しているうちに、仕事を終えた仲間が戻ってきて車は後ろ向きに発進。激しく巧妙なカーチェイスで一気に映画の世界に引き込まれます。サイドブレーキをぐっと引いてドリフトさせるの、めっちゃカッコいいね。
普通なら退屈な作戦会議も、音楽とベイビーの要約で十分に伝わる。むしろ声での説明がない分ビデオクリップのようで観ていて楽しいかも。
音楽、車、事故、耳鳴り。彼の過去は仲間の遺体を載せたままの車をスクラップにするシーンで明らかになります。断片をつなぎ合わせた映像はオレンジがかっていて、『イージー』もこれまでとは違うゆったりした曲調。合わせ技で切ないです。逮捕されるシーンでもかかっててさらに切ない。
ベイビーとデボラのシーンはどこを切り取っても「青春!」って感じがしていいね。コインランドリーでイヤホンシェアなんて素敵じゃないですか。物理的にも精神的にも繋がってる感覚。あれは有線だから余計にいいですよね。バディがエレベーター内で言っていたセリフでバッカナリアに誘うのも、女性を口説くための言葉を持ち合わせていないから自分が理想とする男性の言葉を借りたようで、その手慣れてない感じが青くてかわいいです。
そして教訓も。一度悪事に手を出せば、手を切ることなどなどとできないと覚悟する事。完済して二度と関わるつもりはない気でいた強盗グループのボスに、ベイビーはまたしてもドライバーの仕事を持ちかけられます。断ろうとするも、ボスはベイビーの育ての親であるジョーについていろいろ知っているようで断れない。やる事やってはいおしまい、とはなかなかいきませんね。よく言う「yes,but……(うまくいった。だけど……)」というやつですね。物語の中盤に発生する、クライマックスへ向けてのトラブル。たいていの場合、これの原因が自分にあるとコメディっぽくなる気がします。
あと、危険な遊びも避けるべきですね。こういう現場で録音はよろしくない。目的がなんであれ。
ベイビー、逃しも盗みもするけど基本的に人間に優しいよね。盗んだ車にいた乳児を母親に優しく渡したり、婦人にバッグを返したり。両親が生きていたらきっととても親孝行な子になっていただろうね。ソニーのレコーダーにジョーのことを吹き込んで施設に預けるシーンは感動的。最後まで味方でいてくれるジョーもカッコいいね。
仮釈放のときまで爽やか。構図がバッカナリアへ行くときに迎えにきたベイビーと同じでいいね。
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