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窓から顔をのぞかせると、暖かい風が金色の巻毛を揺らした。
「フウル殿のナリスリア国にはまだまだ及ばないが、これからもっと緑豊かな国に育てていきたいと思っているんだ」
「あの⋯⋯」
「ん?」
「どうぞ、『殿』は外してください。フウルとお呼びください」
そう言うとリオ・ナバ王はとても嬉しそうな顔をした。
「では、遠慮なく呼ばせていただこう。フウル?」
「はい?」
「——呼んでみただけだ」
「え?」
国王の顔に少年のような悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。
フウルも思わず小さく笑ってしまった。
——このままずっと馬車に乗っていたいわ。こうして陛下と話しを続けて⋯⋯、こうして一緒に笑って⋯⋯。だけどそんなことはありえないのね、わたくしは、もうすぐ処刑されるんだから⋯⋯。
心の中でそっとため息をついた。
馬車が大きく揺れ始めた。窓の外を見ると風景が変わっている。どこまでも果てしなく続く砂漠だ——。
太陽の光を受けて、サラサラの砂が金色に輝いている。
砂丘だ——。
馬車を下りると、リオ・ナバ王は従者たちを馬車のそばに残した。
「少しふたりで歩こう」
「はい⋯⋯」
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