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「さあ、出かけよう」 「はい⋯⋯」  リオ・ナバ王はフウルの隣に座った。肩と肩が触れあうほどの近さに座ると、男らしくて清々しい香りがフウルの鼻をくすぐった。しっとりとした空気が漂う深い森の中——そんな雰囲気の香りだ⋯⋯。思わず大きく深呼吸をしたくなる。  ——あら? どうしたのかしら? 首が熱くなってきたわ⋯⋯。  オメガが性的に興奮すると首からフェロモンが出る。フェロモンが出る時は首が熱を持ったように熱くなることは、フウルも知っていた。  ——もしかして、わたくし、発情してる?  そんなことになったら大変だった。とても恥ずかしいし、きっとはしたないオメガだとリオ・ナバ王に思われてしまう!  ——オメガ襟をしっかりと巻かなきゃ!   慌ててオメガ襟をギュッと強く閉じた。結婚するまでは発情しないで、首元をしっかりと隠すのが、未婚のオメガのたしなみなのだ。  アルファ王リオ・ナバは、香りすらも魅力的すぎる。フウルはモゾモゾと腰を動かして、王から少しでも遠ざかろうと動いた。
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