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 金色に光る砂の上を歩いていく。砂はほんとうにびっくりするほどサラサラで、靴やズボンについてもすぐに風に吹かれて飛んでいった。 「数千年前はこの地にも木々が生えていたらしい。だが、長い間の乾いた気候で、すべてが砂になった——。我が国の大半が砂漠なんだ」 「そうなのですね⋯⋯」  砂漠はとても美しい。だけど木々は一本もなかった。ここでは植物はもちろん動物すら生きていくのは難しいだろう。 「さっきカカオ農園を見ただろう?」 「はい」 「あの場所も元は砂漠だった。だが今は緑の農園だ」 「ほんとうにすごいことです⋯⋯」  きっとものすごく大変だったんだろう——、そう思ったとき、ポツポツと雨粒が落ちてきた。 「雨——?」  思わず悲鳴のような声をあげてしまった。晴れているから安心していたらやっぱり雨になってしまったのだ⋯⋯。  空がどんどん暗くなっていく。雨雲が集まってきて、雨の激しさも増していく。  ——大変だわ! 陛下の服が濡れてしまう! 「陛下! わたくしのせいで濡れてしまいます!」  慌てて手を伸ばして、王の服に落ちた雨粒を必死で払った。 「ああ、どうしよう⋯⋯。こんなに濡れて⋯⋯」
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