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1. 過去の思い出
小学一年生だった私は、同い年の従兄弟が書いた文字を読むのに苦労した。
音読は得意な方だった。
カズ君の字が汚すぎたのだ。
「きれいな ゆき ふんでいい けん、ユキせんよう?」
きれいな雪、踏んでいい券。ユキ専用。
初めて聞く名前の券だった。
「だってめっちゃ泣いてたじゃん!」
真っ赤な顔でカズ君が叫んだ。
東京に住む私は、おばあちゃん家の庭に降りつもった雪を踏もうと意気込んでいた。
北国特有のパウダースノーを踏むのは、焼きたてのパイにフォークをさすみたいで楽しい。
積もりたてのサクサクもいい、表面が少し固くなったパリパリも面白い。
(今日はどんな雪?)
わくわくしつつカーテンを開いたのに、なんとボコボコに踏み荒らされていた。
犯人はカズ君で、しかも寝転がって全身の型まで残すオマケつき。
私のショックは相当で、その日はいつまでも涙が止まらなかった。
しかもカズ君から「ごめん」がなかなか出てこなくて、私も意地になった。
「もうカズ君とは一生遊ばない!」
そしたら、なんとカズ君はチャッカマンで足跡を消そうとした。
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