1. 過去の思い出

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 意味が分からない。    チャッカマン程度の火力で氷点下にある雪が溶けるはずもなく、カズ君の手袋をチリッと焦がしただけだったらしい。  今度こそ謝るかと思えば『きれいな ゆき ふんでいい けん』登場である。  しかも薄ピンクの紙に書かれていた。   私が好きだった色だ。媚び媚びだ。    きっとおばさんに「この紙にこう書いたらいいよ」と助言されたに違いない。  それが透けて見えたから、よけい許しがたかった。  機嫌を取ろうと小細工するよりも誠実に謝って欲しかった。 (ごめんって言えばいいだけなのに!)  きれいな薄ピンクが、怒りに油を注いでく。   「カズ君が悪いもん! カズ君は毎日雪遊びできるのに。私は今だけなのに!」 「だからだよ!」 「?」 「今しか一緒に遊べないだろ。だからもう怒んなよ」 「ごめんねは?」 「はぁ?」 「ごめんねしないと遊ばない! あと私、()()()だから! ユキじゃない!」  私用だと強調したくて『ユキせんよう』と書いたのかもしれないけど、完全に裏目だった。 「うるせー! ちょっと書くの間違っただけだし!」  この辺りで、壁に徹していたはずの大人たちが堪えきれずに笑い出す。  とたんに私たちは気まずくなって、ケンカしてたのが嘘みたいに、二人そろって二階に逃げたんだった。    なんだかんだ仲は良かったと思う。    成長して疎遠になっても、会えば“なんだかんだな距離“に戻れると思っていた。
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