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「ううん。むしろ突然来たいって言ったのに。ありがとう」
「いいのよー。大学忙しいだろうし、次会えるのはまた夏かなって思ってたから嬉しいわ。あ、今年もよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「荷物貸しなさい。寒いから早く入っといで」
「ありがとう」
お言葉に甘え、ボストンバッグと紙袋をおじさんに預けてブーツを脱ぐ。
部屋に入ると、外とは別世界みたいに暖かい。
長距離移動のおしまいを肌で感じて、深く息を吐いた。
「あ、紙袋は全部お土産だよ。お煎餅はうちの親からで、赤福は私」
「赤福〜? 羽田で?」
「限定販売的な? なんか列になってて並んじゃった。カズ君て餡子好きだったでしょ」
「よく覚えてたね。一輝喜ぶわ」
「……おばさん、カズ君は?」
「畳の部屋よ。コートかけとくから会ってあげて」
おばさんにお礼を言って、リビングダイニングと続きになっている畳の部屋に向かう。
線香の匂いが一気に強くなった。
胸がぎゅっとなるのに気づかない振りをして、両手を握る。
ゆっくり奥へ進むと、小さな仏壇に、笑顔のカズ君をみつけた。
一番会っていたころに記憶は引きずられるようで、私がパッっと思い出すカズ君は小学生の彼だ。
まだ声変わりする前で、背丈も同じくらいだった。
写真のカズ君は、なんだか少し大人すぎる。
でも知らないわけじゃない。
だってこれは私が撮ったのだ。
ちょうど半年前、東京の大学に通う友達に会いに来たカズ君に、偶然会ったから。
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