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3. 半年前
「お待たせしましたー! 生中4つです」
料理皿と座る人の位置を確認しながらジョッキを並べ、空になった食器を下げていく。
週末のチェーン居酒屋で、バイトに求められるのはスピードだ。
お客さんの顔を気にする余裕がないくらい、あの日は忙しかった。
だから、「友希?」と呼ばれてもしばらく反応できなかった。
「誰って顔されたのショックだったなー」
「だからごめんって」
「すげえ不審者見る目だったじゃん」
「……」
(この忙しいのにナンパ? って内心イラついたとは言えないな)
居酒屋で再会した次の日。
「お詫びに何か奢れ、ついでに東京案内しろ」というカズ君の無茶ぶりに付き合って、私は渋谷のスタバにいた。
「……これ以上は何も奢らないからね」
「はあ? タカられてるみたいなこと言うなよ」
「その限定フラペは! タカられましたが!」
「あはは。ありがとなー」
くそう。
回りくどい誘い方は、昔から変わらないなと呆れてしまう。
「素直にさ、会いたいとか遊びたいって言えばいいのに」
「……言ったら会ってくれたわけ?」
「え、会うよ普通に」
「ふーん」
なんとなく気まずくなって、お互い無言でフラペチーノを飲み干して店を出た。
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