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ルアンナ・アーテス
世の中には星の数ほど男がいる。
ロンドンは世界でいちばん大きな街だというから、そこにいる男も世界でいちばん多いはずだ。
それなのに――。
それだけたくさんの男がいるって言うのに、どうしてあたしのまわりにはろくでなししかいないんだろう。
この前まで付き合っていた男、ディックもそうだ。
お前は最高だ、ずっと一緒にいようなんて言ってたくせに、あたしが『結婚』という言葉を口にした途端、お前にはオレよりもふさわしい男がいるはずだ――なんてことを言ってそれっきり姿を見せなくなった。
ふざけた男だ。
何がオレよりふさわしい男よ。もっともらしいことを言ってるけど、要は娼婦なんかと結婚できるかってことでしょ。
あたしだって娼婦が世の中からどう思われているかぐらい知ってるわ。
身体を売って金を稼ぐ賎しい女たち――そう言って世の人々は侮蔑的な目を向ける。
ルアンナにはそこがわからない。
物乞いのように恵んでもらっているわけでもないし、誰かに迷惑をかけているわけでもない。むしろ抱いた男に喜ばれているのだからいいじゃないか、と思うのだ。
娼婦なんて商売をしている女に本気で言い寄ってくる男がそうそういるわけがないことだってわかってる。
わかっちゃいるけど――。
別に多くを望んでるわけじゃない。
楽しいときは一緒に喜びたいし、寂しいときは傍にいてほしい。ただ二人で普通の生活をしたいだけなのだ。
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