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薄れゆく意識の中で
燃えている……。
燃え盛る炎が全身を包みこんでいる。でも、不思議と苦痛は感じない。
もう死んでるからなのかな……。
彼女は数日前に出会った男の言葉を思い出す。
――残念ですが、あなたはもう死んでいます。
元々身体も弱かったし、仕事が仕事だから長く生きられないのは何となくわかっていた。
ただ、もう少し――。
もう少し、あの子のそばにいてあげたかった――。
首にかかったロケットを両手で握りしめる。
私がいなくなったらあの子はどう思うのだろう。
これから先、一人で生きていけるだろうか。
心配だ――。
とても心配だ。
でも、ああ、もう時間がない。
彼女は薄れゆく意識の中で最後に残った力のすべてを両手に込めた。
握りしめたロケットに思いを託すように。
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