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この街に住んで三年になるが、キョウジはいまだにロンドンという街に慣れていない。
ひとつは騒々しいこと。
それだけ街に活気があるということなのだが、田舎育ちのキョウジにとってロンドンの時間の流れは早すぎる。
もうひとつは霧である。
テムズ川から広がる霧はロンドンの名物だ。街をすっぽりと包みこみ幻想的な雰囲気を醸し出す。
しかし――実際、街を包みこんでいるのは霧だけでないのだ。工業地帯から限りなく排出される薄汚れた排煙。これもまた〝霧〟の正体なのである。朝晩の霧と違い日中の霧はこの排煙であることも少なくない。
霧の都――などと、ロマンチックな言われ方をするが、これはこの国の人々が言う自虐的なジョークなのではないか、と思っている。
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