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候補者の一人、マディ・クレバンスを見つけるのは簡単だった。
教会の名簿に名前が載っていたのだ。
銀行員と書かれていたが、平たく言えばホワイトチャペル界隈をうろつく金貸しだ。礼拝にも時々来ていたが信仰心があるようには見えなかった。おそらく誰か金を貸し付けられそうな相手を物色しに来ていたのだろう。フォスターが金を貸してほしいと声をかけると金貸しはいやらしい笑いを浮かべ、簡単に呼び出すことができた。
人気のない夜の公園で、フォスターはクレバンスの心臓にナイフを突き立てた。
金貸しは驚いたように目を剥いたが、かまわずナイフを押し込んだ。血を吐き、崩れ落ちるように倒れ込んだ彼の胸を生き返らないように何度も刺した。それから公園の管理小屋に運び、火をつけた。
罪悪感はまったくなかった。
むしろ《残され人》を排除したという高揚感と、責務を果たしたという大きな達成感が胸の中に沸き上がってきた。
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