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味わい
マリが起床してトイレへ向かうと、玄関で叔父さんが靴ひもを結んでいた。
「あ。叔父さん、帰っちゃうの?」
「ああ。仕事があるからね」
「ママ、起こしてくるね」
駆け出そうとするマリの肩を叔父さんは優しくつかんだ。
「疲れているんだ。眠らせてあげなさい」
マリは言いつけに従った。叔父さんに告げる。
「昨日のパーティー、すごく楽しかったね。パパが亡くなってからあんなに笑ったこと、ない。叔父さんからプレゼントももらえて。あのうさぎのぬいぐるみ、マリの親友にするからね」
「ははは」
叔父さんは笑う。
マリは続けた。
「ママの作った料理もすごかったね。ローストビーフ。豪華なサラダ。パエリアも、スープも、チキンの蒸したのも。あんなに張り切ったママ初めて見たよ。叔父さんはどの料理がよかった?」
「うん。どれもこれも美味しかったよ。さてと」叔父さんは立ち上がる。「行くか」
マリは切なげに声をかける。
「叔父さあん。また、泊まりに来てね」
「ああいいとも」
「またママに言って豪華な料理たくさん作っておくから」
「ありがとう」叔父さんは微笑した。「ママの手作り料理楽しみだな。ただ、一番美味しかったのは」
「美味しかったのは?」
叔父さんはにやり。
「マリのママそのものだよ」
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