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4、もしかして
お弁当を食べて少し眠くなった、木曜日の五時間目の古典の時間。
微妙に聞き取りにくいおじいちゃん先生の声を聞きながら、僕は黒板に板書されている内容をノートにうつす。
時間帯に加え、おじいちゃん先生の声質が子守唄みたいに聞こえるのも相まって、クラスメイトの何人かは寝ちゃってる。僕の前の席の大谷くんもその一人で、堂々と机に突っ伏して寝ていた。
ノート、書かなくて大丈夫なのかな。
後でテストの時に困るんじゃ。
大谷くんが僕に助けを求めてくることはないだろうけど、もし僕で良かったらいつでも見せるんだけどな。
いつもと変わり映えのしない光景。
僕と大谷くんは同じ教室で授業を受けるクラスメイトで、席が前後ってだけ。
穴が開くほど見つめていたら、ふいに大谷くんが大きな身体を起こし、振り返る。
ど、どうしよう。し、視線がうるさすぎたかな!?
困り果てた僕は、曖昧に笑いながら小さく手を振る。
大谷くんはそんな僕をしばらく見ていたけど、すぐに姿勢を戻し、また机に突っ伏した。
あ、焦ったぁ……。
大谷くんは背中に目でもついているのか、時々目が合うんだよね。
たぶん寝ぼけてただけとか、身体を動かしたくなったとか。そんな感じで深い意味なんてないんだろう。だけど、彼に密かに片想いをしている僕にとっては目が合うだけでドキドキしちゃうよ。
魔王城にいたアルドとタビーの夢を見てから、一週間。
一年以上毎日欠かさずに彼らの夢を見ていたのに、なぜかあの日からパタリと見なくなってしまった。
最後の戦いって言ってたし、二人が魔王を倒して、ついでに夢も終わったって考えるのが順当なのかな。
夢の中でだけは大谷くん――じゃなくてアルドに愛されていた僕も、ついに夢は夢のままで終わってしまった。
あんまり夢のことばかり考えていても仕方ないし、ちょうど良かったのかも。
夢では恋人同士だったとしても、現実では僕と大谷くんはただのクラスメイト。
告白する勇気はもちろん、自分から話しかける勇気さえもない。それどころか、目が合うだけでワタワタしている始末。こんなんじゃ、いつまで経っても進展がないよね。
恋人は無理でも、せめて友達になれたらなって思うんだけど……。怪しまれたらどうしようとか、冷たくされたらとか色々考えちゃって、結局話しかけられていない。
同じクラスなんだから、話しかける機会なんていくらでもあるのにね。この調子だったら、ほとんど会話もないまま高校卒業しちゃう確率が高そう。
初めて好きになった人なのに。
本当に、僕ってダメだな。
みんな、どうやって好きな人と仲良くなってるんだろう。僕なんて話しかけるのもできないのに、付き合うなんて想像もできない。
それなのに、大谷くんがどんな声で好きな人に愛を伝えるのかも、どんな目で好きな人を見つめるのかも知ってるなんて。
色々虚しくなって、僕はこっそりため息をつく。
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