5、彼との約束

1/2
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

5、彼との約束

「アルド! 目を開けてよ、アルド!」  僕の喉が悲痛な叫び声を絞り出し、視界は涙でぼやけていた。冷たい床に膝をついている僕が抱き込んでいるのは、アルドかな。かすんだ目でも、赤髪と騎士の格好は認識できた。  もしかして、これはアルドとタビーの夢?  もう一週間以上も夢を見ていなかったのに、大谷くんと久しぶりに話せた今日に限って、また彼らの夢を見るなんて。  相変わらず視界はボヤーッとしているけど、どうにか目をこらす。そうしたら、心臓の辺りが赤く染まり、固く目を閉じているアルドが僕の腕の中にいた。  え……?  僕が顔を上げ、視線の先をにらみつける。  そこには、黒いツノが二本生えた若そうに見える男が玉座にもたれかかっていた。男の赤い瞳には光がなく、胸には穴が空いている。  なに、あれ。もしかして、魔王? というか、死んでる……? いや、そんなことよりも、アルドは!? 「今、回復するからね」  僕の腕が腕の中のアルドを強く抱きしめ、力のない声でつぶやく。すぐに、僕がわきに抱えていたロッドの宝玉が光った。  アルドの瞳は固く閉じられたままで、何の反応もない。  え、ちょ、嘘だよね……? 何でアルドまで?  魔王と相打ちとか?  全然理解できないでいる間に、僕の口は何かに取り憑かれたように何度も何度も回復呪文を唱える。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!