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「人懐っこいのね」
リクくんの顎の下を撫でると、気持ちよさそうな声が聞こえた。私の言葉に、ペットのショップで売れ残ってた子なんです、と肩を竦めるミナミ。
「滅茶苦茶可愛いんですけどほら……この子焦げ茶色でしょう?焦げ茶色で、しかも結構色が黒に近いから人気がなかったみたいで。長いこと気になってたんですけど、どんどん大きくなっていって、なんか心配になっちゃって。思い切って奮発しちゃったんです」
「ええ?焦げ茶可愛いのに」
「黒っぽい毛だと、目の位置がわかりづらい、表情がわかりづらいって理由で……イエローより人気がないみたいで。私も可愛いって思ってるんですけどね。あと、背中に白っぽい模様があるのも人気が落ちた理由らしくて……もったいない。こんなに人懐っこくていい子なのに」
「ほんとにね。ああもう、くすうぐったいったら!」
リクは人間が本当に好きらしい。しゃがみこんだ私の顔をぺろぺろと舐めてくれる。――舐められるのは全然いいのだが、今日は少し濃いめの化粧をしてきてしまっていた。日焼け止めもつけているし、犬が舐めても大丈夫だっただろうかと心配になってしまう。リクはあまり気にしてはいないようだったが。
――まったく、それに対してうちの子ときたら。
ちら、と視線をそちらに投げた。おっさんよろしくべったりと地面にお尻を付けて座っているポチ。そして、リクの方を見ることもミナミを気にすることもなく、ただひたすらぼけっと佇んでいるだけである。
この子ももう少し、社交性と可愛い気を身に着けてほしい。私は思わずため息をついてしまった。
「えっと、先輩のところの犬は……」
「見ての通り、雑種よ」
ミナミの言葉に、肩を竦める私。
「この通り、ものすっごくツンデレなんだよね。散歩も嫌いだし、ご飯もすぐえり好みするし、我儘は多いしで困っちゃってて。まあ、カラスに襲われているのを助けた元保護犬だから……人見知りや犬見知りが激しいのは仕方ないかもしれないけど。でも、できればもう少し愛想よくしてほしいし、躾も上手にやりたいんだよね」
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