ポチ、ポチ、ポチ。

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 何が困るってこの犬、トイレも下手なのである。所定の位置でトイレをしてくれと頼むのに、何故か変なところでおしっこをしたがるのだ。人間のトイレに強引に入っていこうとするのもやめてほしい(そしてうっかり床をびしょびしょにした前科がある)。外で散歩中にトイレをするのも苦手らしく、足を上げても自分にかかっていたり、下手したらトイレ中にバランスを崩して転んでおしっこまみれになっていたりする。  そのたびに掃除したり、風呂にいれなければいけない私の身にもなってほしいものだ。 「トイレトレーニングとかも下手くそで。まあ、うちのアパートが大型犬でも飼っていいって言ってくれたのはありがたかったんだけど……だからこそ、部屋を汚さないようにしたいんだよね。トイレシート床に敷き詰めるにも限界があるし……何かアドバイスわる?あと、もっとこの子に社交的になってほしいんだけど、どうしたらいいかな」  ミナミがどれくらい犬について詳しいかわからないが、少なくとも見たところリクへの躾は結構成功しているように見える。ひょっとしたら、前にも犬を飼っていた経験があるのかもしれない。なんでもいいから、参考になる意見が欲しいのが本音だった。 「うーん、そうですねえ。トレーニングは地道に続けるしかないと思いますけど……」  ああそうだ、と声を上げるミナミ。 「犬の幼稚園みたいなの、今はあるみたいですよ。トレーナーさんがしっかり躾をしてくれるみたいです。そういうところに通わせるのを、検討してみてはいかがでしょう?」 「犬の幼稚園かあ」 「あと、ドッグランですかね。他の犬と交流する機会を増やしてみるとか。見たところ、そちらのわんちゃん……えっと」 「あ、名前言ってなかったわね。ポチっていうんだけど」 「ポチくんですか、古風でいい名前ですね。……ポチくんは、リクにも吠えてないし、少し臆病だけど他のわんちゃんに襲い掛かっちゃうタイプではないと思うんです。だったら、そうそうトラブルにならないんじゃないでしょうか」 「なるほどね。ドッグラン、今度の休みに行ってみようかな。ねえ、お前もちょっとは興味あるでしょ?」  私の問に、ポチは面倒くさそうな眼を向けてきた。そんな、いかにも“興味ありません”な顔をしなくてもいいのに。  相変わらず、愛想の欠片もない犬である。
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