1:始まりは急転直下

1/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

1:始まりは急転直下

 二〇二三年夏。  母から電話があった。  高熱が下がらなくて肩から背中にかけてすごく痛い、と弱音を吐いていた。  母ももう高齢者なので、体調が悪いと言われるとやはり心配である。コロナを疑ったが、陰性らしい。  一回は耐えかねて母自身が救急車を呼んで、私も呼び出された。生まれて初めて乗った救急車はいやがうえにも切羽詰まっていて、思わず泣いた。  運ばれた病院ではコロナとインフルエンザの検査をしたが、やはり陰性で、何の処置もされずに一万円も取られて帰らされた。待合所でぐーぐるの評判を見ていたが、さすが星ひとつの評価だと思った。  それから約十日後。  在宅勤務をしていた私の携帯に、知らない番号から着信があった。留守録が入っていたので聞いて、私は愕然とした。 「たつみ暁さんの携帯でよろしいでしょうか。お母様が路上で転倒されて、救急搬送しました」  救急隊からの連絡だった。  物凄く慌てて折り返しの電話をし、運ばれた病院を聞いた。リーダーにチャットを送って早退すると、姉にもLINEを飛ばして、病院へ向かった。  やっぱりあのヤブ医者病院が対処してくれなかったからこうなったんだ。  とか。  転倒で救急車ってなんだ? 骨折でもしたのか?  とか。  電車に揺られながら色々な考えが私の頭の中をぐるぐる回っていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!