5人が本棚に入れています
本棚に追加
一
この世界は、奇跡が全てだった。
奇跡を生業とする人々を、奇跡師と呼ぶ。
人は生まれつき与えられる能力があった。
瞬間移動、透明化、治癒など、人により様々。
人は、それを奇跡と呼んだ。
強い奇跡を持つ人や家系は、地位も財も名誉も、それに応じて手に入れることが出来た。
奇跡は、遺伝したりすることもあるし、突然一族となんの関係もない奇跡を持つ子が生まれたりと、本当に様々だ。
当然、弱い奇跡を持つものは虐げられた。
要するに、より強い奇跡を持つ人間だけが優遇される、くそったれな世界だってこと。
私は、弱者の部類だった。
有名な奇跡師の四家のうち一家、春園家の出身にも関わらず、私の奇跡は駄目駄目だった。
病気以外を直せる。
一見すればかなり便利な奇跡だと感じるかもしれない。
けど、一人を回復させてから一日という長いスパンが必要なのだ。
私以上に優秀な治癒の奇跡師など、吐いて捨てるほど存在する。
一方、双子の姉、春園未琴は違った。
未琴は、人の心を読む奇跡を使えた。
しかも同時に、複数人の。
春園家の希望、それが姉に付けられた称号だった。
春園家の恥さらし、それが私に押された烙印だった。
でも私はそれで良かった。
優しくて大好きな姉が輝かしい未来を歩けるならば。
私は、恥さらしだって構わないと、そう思っていたから。
最初のコメントを投稿しよう!