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『奇跡の力が全てではない。』 遠い昔、そう言って各地を旅していた女がいたそうだ。 『弱者も強者も手を取り合う時代が必ず来る。』と。 あの頃は、奇跡師でありながら弱者の味方をする女は、大きな話題を呼んだ。 弱者からは、本名である『(うらら)』 強者からは、忌むべき者として『邪子(じゃこ)』 と呼ばれた。 麗の奇跡の力のためか、大抵の強者は麗に斬り掛かってもあっさり躱され、眠らされてしまう。 眠り、それが彼女の奇跡なのだろう。 彼女を希望に、彼女の言葉を信じ生きた弱者も少なからずいたはずだ。 そして、ことごとく防がれたものの、暴動を起こそうとした者も。 麗自身がなにか暴力的なことに訴えることはなく、ただ集会を開いたりするのみだった。 しかしその後、奇跡師である女は、原因不明の死を遂げた。 多分、誰かの奇跡によって殺されたのだろう。それ以外の原因が思いつかない。 あれほど生き続けた麗でさえ死んだのだ。 奇跡四家である春園家、夏宮家、秋島家、冬本家の親類縁者の誰かが殺した可能性が高かった。 麗が殺されるのは、こう言っちゃなんだがこの世界では至極当然だった。 だって、大半の奇跡師や強者にとって、弱者を見下すのは当たり前のことだ。 それを突然手を取り合えなんて、納得できるものではない。 弱者に負けることはない。しかし余計な事を吹き込まれ反乱を起こされるのは面倒くさい。 それが彼らの考えだった。 私の家に昔からある蔵。 そこには、あの『麗』に関する資料もある。 麗が望んでいた未来を、私が実現できたとしたら。 麗、、、彼女には、きっと策があったのだ。 私が生まれるよ前の話だから今まで気にせず行きてきたが、彼女の策さえ分かれば、きっと姉を救える。 姉だけではない。 奇跡の力では無く、誰もが平等に手を取りあえる世界が作れれば、たくさんの人が救える。 私が、やるんだ。 奇跡四家、春園家のなり損ないが。
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