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私が『それ』を見つけてしまったのは、春の暖かい日のこと。 すずめが鳴いているのが聞こえてくる。 その日は姉が珍しく寝坊してしまって、起こしに行っていた。 こんこんっと、部屋をノックする。 「お姉ちゃん、いる?」 両親の前とは違う、砕けた口調で姉を呼ぶ。 姉からの反応が帰ってこない。 昨日は父主催の宴があって、姉も忙しかった。 きっと熟睡しているに違いない。 戸を開こうとして、少し躊躇う。 「いい?私の部屋に入ったら駄目だからね。」 私と両親、そして使用人にすら言っていた言葉。 優しく、基本的になんでも許してくれる姉だったが、それだけは長年言い続けてきた。 (でも、ちょっと入るくらいだったら、いいよね、、、。) 別に姉の部屋の物に触れるわけじゃない。 ただ起こしに行くだけだ。 そのまま、ゆっくり戸を開く。 使用人が掃除に入らないのも関わらず、綺麗な部屋だった。 姉は、どこからどうみても完璧な人だと思った。 性格も、家柄も、教養も、外面も、奇跡も。 少しだけ羨ましく思ってしまった。 案の定、姉は眠っていた。 春の明るい日が差し込み、寝ている姐の艷やかな黒髪を暖かく包みこんでいる。 「お姉ちゃん。」 軽く揺すったが、起きる気配がまるでない。 ふと、姉の机の引き出しから、袋がはみ出しているのが見えた。 (しまっておこう。) それくらいの軽い気持ちで、引き出しを開いた。 「え、、、?」 思わず、声が出た。出てしまった。 「なに、これ、、、。」 そこには、 大量の薬が入った、紙袋があった。
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