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「強くするって、、、。」 いまいちよく分からなくて、首を傾げる。 奇跡とは、元々あるものだ。元の素質で弱いか強いか決まるのが当たり前。 それに、姉の力はそんな薬がなくても充分強いはずだ。 「私の力が、心を読む力なのは、実乃梨も知ってるよね?」 「うん。」 母はよく、姉を成功作と裏で呼んでいた。 結局、私も姉も名家の道具でしかないのだと、その言葉を聞いたときからずっと思っていた。 「私の奇跡は、複数人の心が読める、"心映し"っていう奇跡、、、ってことになってる。」 「なってる?」 姉は、私の問いにふいっと目を動かして、窓の外を見た。 姉の顔は、今まで見たことのないくらいに覚悟のある顔だった。 「本当は、一人の感情を見るっていう奇跡なの。」 沈黙が走る。 状況が、飲み込めない。 「感情を、見る、、、」 「感情には色があってね、お姉ちゃんはそれが人の頭の上に浮かんでいるのが見えたの。昔はね。」 昔は、を強調して姉は話した。 それだと、姉の奇跡も、さして強くないと思ってしまった。 「この薬はね、、、奇跡の力を、強くというか、進化させてくれるの。」 「進化?」 「ええ、お陰でお姉ちゃんは、この力を手に入れることが出来たの。」 微笑む姉の顔に、どこか違和感を覚えた。 「その薬、副作用とかって、、、。」 姉は暫く黙りこんで、ゆっくり口を開いた。 「これは、私がとある魔女から貰った薬なんだけど、、、副作用は、ある。」 当たり前の事だと思った。 奇跡を進化させる薬なんて、皆喉から手が出るほど欲しいに決まっている。 それこそ、私だって。 自分の奇跡が、あと、ほんの少しでも強かったならって、何度も何度も願っていた。 もう少し便利な奇跡なら、姉のように認められていたはずだったから。 恥さらしの烙印を押されることも、きっと無かっただろうから。 でも、普及しないということは、何かしらの問題があるということ。 「どんな副作用なの、、、?」 姉は躊躇いがちに目を伏せて、弱く答えた。 「寿命を削るのよ。」 姉が消し忘れていたからか短くなった蝋燭が、ゆらりと小さく揺れた。 その火こそ、姉の命に思えた。 いつ消えるかわからない、弱く脆い命のように。
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