形のない奇跡達

三

？？？視点
昼下がり、温かさにあくびが出てしまう。
"奇跡は天からの賜り物"
"奇跡の可能性は無限大"
"より強い奇跡こそが正義"
そう書いてある本を読んだことがある。
"奇跡"の本質も知らず、奇跡、奇跡、奇跡と唱える愚かで醜悪な人間ども。
反吐が出ると同時に、馬鹿らしくて笑ってしまう。
奇跡とは、運命でありながら同時に呪いでもあるというのに。
奇跡によって、どれだけ苦しめられた人間がいることか、この世のお偉方は知らない。
奇跡も、奇跡だけで物事を判断する愚か極まりない人間どもも。
皆、滅び去ればいい。
私だけが、あの子との記憶を保って生きていく。
なんと、素晴らしいことだろうか。
人間など、自らの愛す奇跡でその身を滅ぼせばいい。
この世では善人から死んでいく。
最後に生き残るのは悪人だけだ。
だから、この世に見せしめてやるのだ。
私は、この世を狂わせてやる。
皆が奇跡にどっぷり嵌ったそのころに。
"奇跡"の真実を教えてやろう。
そして皆、苦しみ抜いて死ねばいい。