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この世界は、奇跡が全てだった。 奇跡を生業とする人々を、奇跡師と呼ぶ。 人は生まれつき与えられる能力があった。 瞬間移動、透明化、治癒など、人により様々。 人は、それを奇跡と呼んだ。 強い奇跡を持つ人や家系は、地位も財も名誉も、それに応じて手に入れることが出来た。 奇跡は、遺伝したりすることもあるし、突然一族となんの関係もない奇跡を持つ子が生まれたりと、本当に様々だ。 当然、弱い奇跡を持つものは虐げられた。 要するに、より強い奇跡を持つ人間だけが優遇される、くそったれな世界だってこと。 私は、弱者の部類だった。 有名な奇跡師の四家のうち一家、春園家の出身にも関わらず、私の奇跡は駄目駄目だった。 病気以外を直せる。 一見すればかなり便利な奇跡だと感じるかもしれない。 けど、一人を回復させてから一日という長いスパンが必要なのだ。 私以上に優秀な治癒の奇跡師など、吐いて捨てるほど存在する。 一方、双子の姉、春園未琴は違った。 未琴は、人の心を読む奇跡を使えた。 しかも同時に、複数人の。 春園家の希望、それが姉に付けられた称号だった。 春園家の恥さらし、それが私に押された烙印だった。 でも私はそれで良かった。 優しくて大好きな姉が輝かしい未来を歩けるならば。 私は、恥さらしだって構わないと、そう思っていたから。
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