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砂糖症候群。通称:シュガーホリック。
最初に感染者第一号が運び込まれたのは深夜の救命病棟だったという。
「すみません、娘がいきなり溶けはじめたんですけど!?」
外科的治療がわからず、ただ溶けてしまった彼女の遺体……溶けてしまったため、墓に入れることができるほどカケラが残らなかった……を検査して驚いたのは、彼女の体の成分は生物のものではなく、砂糖になっていたことだった。
それから砂糖症候群患者は救急病棟に運び込まれてくるようになったが、成分が生物のものから砂糖になったせいか、巨大冷蔵庫に入れておけば実体を保てたものの、治療方法が確立されなかった。
ただ全員の検査をし、カウンセリングを続けた医師は、ひとつの仮説を立てた。
「全員、恋をしていてこじれてないか」と。
こじれた恋の末に、砂糖の塊になって溶けて消えてしまう。
特に発症する年頃は十代から二十代。たまに三十代もいるが、その三十代のほとんどはこじれているどころか泥沼の愛憎劇になってしまい、裁判を何件も掛け持ちになっているほどまずいものになっているが、とにかく。
自分はこじれた恋をしています、と堂々と触れ込んでいるものだから、砂糖症候群に罹患していることを言いたがる人間はほどいなかった。
誰だってそうだ。
自分はこじれた恋をしていますなんて、公表したくないものだ。
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