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そう言って人力車に装着された赤いシートを普段は腰ぐらいまでのものを肩ぐらいまでにかぶせる。そうして二人の男女が、この雪中行のお客さんとなった。走り出すや否やお姉さんが話しかけてくる。
お姉さん 『これ、なんですか? このメロンを抱いたお女の子のイラスト、かわいい』
あなた 『あぁ、この車、名前はメロンちゃん号っていうんです。お客さんとメロンちゃんを乗っけて走ってる』
お姉さんの顔にようやく笑顔が浮かんだ。さぁ出発だ。だがもう今年で45歳になる身体にとってはきつかった。幾度か、渋滞を避け、県道を迂回し、路地裏をすり抜けて海岸線に出た。もう安全圏に入ったと思ったが風雪が行く手を阻む。
「最後はどうなるの? 無事目的地に着けたのかい?」
「まあ、王道ストーリーからすると着くでしょうね。最後は少しカッコつけましょう」
とうとう目的地は目の前だった。普段は30分とかからない道筋を2時間もかかってしまった。だが最後の登坂を見て愕然とした。とても滑って登れそうにない。
あなた 『申し訳ないけど、ここまでだ。ここからは歩いてもらうしかない。晴れ着、汚れちまうかな?』
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