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「あんまり考えている時間もないし、まっとうにつじつまの整った物語なんか作れそうにないから、想像力で楽しみましょう。じゃあ、貴方が町を出ていくシーンを描いてみるわ。そう、貴方は空港まで送ろうとするお兄さんの申し出を断って、わざわざ武儀駅から電車に乗っていくの。こんな感じ」
お兄さん 『本当に空港まで送っていかなくていいのか?』
あなた 『ありがとう。でもさ、もう、この汽車に乗ることもないとなると無性に乗りたくて。帯広まで3年間、通学したやつだからさ』
「こうして貴方は故郷を捨てて去っていくんだけど、汽車の時間まで、いっしょに待とうとするお兄さんを諭して送り返して、一人ホームで待つの。士幌線が廃止される一月前。しんしんと雪が降っているわ。そして例の貴方にだけ見える不思議な女の子とは微笑みをかわしただけで、お別れするの」
「名前は? 結局、女の子の名前はなんて名付けたんだ?」
「あらっ。うっかりしてたわ。そうね。牧畜をしてたから牛さんと言ったら失礼かしら。じゃあメロンちゃんでどう。実家はメロンも栽培しているから。メロンと言えば夕張だけど、実は帯広も有名なメロンの産地なのよ」
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