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「結黄~、帰るぞ~」
「あらぁ、蒼くん! 今日もお迎え、お疲れ様ね」
「全然っすよ」
保育園のお迎えに行くと、ちょくちょく他の子のママさんと一緒になることがある。高校生のお迎えが珍しいのか、声をかけられることも多い。母ちゃんよりも、オレの方がよっぽど他のママさん達と仲がいいような気さえする。
偉いわね~、と声をかけられるのは少し苦手だけれど、みんななんだかんだ優しくしてくれるから有り難い。
その日も少しだけママさん達と話をしてから帰宅した。
「ただいま」
誰もいないと思って小さく呟いたのに
「蒼……!」
奥から母ちゃんが飛び出してくる。
「……母ちゃん? どしたの」
「おばあちゃんが……」
「……ばあちゃん?」
「…………亡くなったって……」
「――は?」
抱っこ紐がなかったら、結黄を落っことしていたかもしれない。
「なん……?」
「心筋梗塞だったって、おじいちゃんから連絡があって……」
「……」
言葉が分からなくなったみたいに唇だけパクパクさせて。目の前が真っ暗になるってこういうことなんだな、なんて。変に納得している自分が遠い。
「とにかく、病院に」
結黄のお出かけバッグをひっつかんだ母ちゃんが、オレの腕を引く。
引きずられるみたいに家を出て、そこから先はよく覚えていない。
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