episode.1 別れと、出会いと

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 翌日。  行こうか行くまいか迷って、結局社会科準備室へ向かった昼休み。  ドアを開けたオレの顔を見るなり、先生は少しホッとしたように笑ってくれた。 「来ましたか」 「え? ダメだった?」 「いいえ、逆です。来てくれて良かった」  いつもオレが座る場所に、お弁当箱が置かれている。 「これ……?」 「君に作ってきました」 「ぇ? 先生が?」 「食べられる分だけでいいですから、食べてください。足りなければ、私の分も食べて構いません」 「でも、……パン、持ってきたし……」 「では、パンも食べて、お弁当も食べればいいんです」  何の問題があるのかと言いたげな表情をした先生が、それでも躊躇うオレにだめ押ししてくる。 「残しても構いません。……背、伸ばしたいんでしょう?」 「……うん」 「他の生徒には内緒ですよ」 「……ん、分かってる」 「では、いただきましょう」  まるで幼稚園生か小学生みたいに、先生と一緒に手を合わせて「いただきます」をして。  昨日も食べた玉子焼を、まずは一口。 「……美味しい」 「それは良かった。他のおかずも、食べてみてください。全部自信作ですから」 「……ん。ちゃんと食べる」  本当は、好き嫌いだってないし、アレルギーがある訳でもない。ただ純粋に、食べたくないというか、食べられないというか、食べることに興味がないというか。  「美味しい」も「美味しくない」もよく分からなくなっていた近頃の食事は、ただ苦痛なだけの時間だったけれど。 「……先生、すごいね」 「何がです?」 「料理、上手なんだね」 「……ありがとうございます」 「ホントだよ? お世辞とかじゃなくて。ホントに美味しい」 「それはよかった。無理せず、食べられるだけでいいですからね」  うん、と頷き返したオレが、どんな表情をしていたのかは分からなかったけど。  先生は少しだけ目を丸くした後で、にっこりと笑い返してくれた。  *****
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