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夏頃から続いている、先生とのお昼ご飯。毎日毎日、彩りよく美味しいお弁当を食べさせてもらった。
最近、ようやくお弁当箱を空に出来る日が増えてきている。初めて全部食べ切れた日は、先生もにっこり笑ってくれたなぁ、なんて。思い出し笑いと一緒に玉子焼きを飲み込む。
こっちを見て微笑んでいた先生が、はた、と何かに気付いたように首を傾げた。
「背が……少し伸びたんじゃないですか?」
「えぇ? 分かんない。だって春しか測んないじゃん」
「保健室には毎日身長計が置いてありますよ」
「ん~。……いや、春のお楽しみにしとく」
「そうですか。それも楽しみがあって良いことですね」
あの日と同じように、先生がにっこり笑ってくれる。他の生徒の前では未だにカタイままなのに、なんて。ちょっとだけ嬉しくてくすぐったい。
「もうすぐ春休みですね」
「そっかぁ……もうそんな季節かぁ」
「身体測定が楽しみですね」
「ホントに! 伸びてっかなぁ」
「伸びていますよ。……春休みの間も、食事をきちんととれば、きっともっと伸びます」
「……うん。ちゃんと食べる」
「それがいいです」
「っ、でも!」
「はい?」
「……来年も……その……先生のお弁当、楽しみにしてて、いい?」
伺うように見つめた先、ちょっとだけ目を丸くした先生が、ふっくらと優しい顔して笑ってくれた。
「……。構いませんよ。私も、君と食べるお弁当は、いつもより美味しく感じますから」
「へへ。じゃあ、来年もお願いします」
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