episode.0 家族の始まり

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 波多野を名乗れる最後の日に、母ちゃんはオレを連れてばあちゃんの家へ向かった。  迎え入れてくれたばあちゃんは、もう何の用件か知ってるみたいに、ほんの少し淋しそうな顔をしていた。 「……再婚、することになりまして」  何度か躊躇った後に早口でそう呟いた母ちゃんの言葉に、ただゆっくり頷いたじいちゃんと、母ちゃんの手を優しく握ったばあちゃんと。 「……あの子が亡くなって、もう十二年よ。……よく、これまで一人で頑張ってきたわ」 「……お義母さん……」 「……あの子はもういないけれど、蒼は私達の孫だし、……あなたのことも、本当の娘だと思っているのね。……だから、何か困ったことがあったら、今まで通りにいつでも頼って頂戴ね」 「…………ありがとうございます」  深々と頭を下げた母ちゃんの目尻が、光っていた。それ以上何も言わない母ちゃんをチラチラ見つめた後。  意を決してばあちゃんを見つめる。 「…………オレ」 「うん?」 「……これからも、……ここに、来ていい?」 「勿論。いつでもおいで」  コロコロと。いつもの顔で笑ったばあちゃんが、優しい手でオレの肩を撫でてくれた。 「いつでも、ここで待ってるからね」  ***  
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