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優の家とばあちゃんの家を行ったり来たりしながら、家にいる時間は部屋に引きこもりながら、日々時間を過ごした。
別に尚登さんを無視したりはしないし、母ちゃんに悪態つくこともしない。暴力だって振るったりしてない。学校にも毎日行ってる。ただ、家にいる時に一人で過ごす時間が増えただけだ。
母ちゃんのお腹は随分大きくなって、家の中には赤ちゃんグッズがたくさん増えた。
再来週が出産予定だと聞いている。
「ごちそうさま」
「……ねぇ、蒼。もう少し食べた方が……」
「大丈夫だって。もうお腹いっぱいだもん」
「けど……」
「尚登さんもごめんね。また明日食べるから」
「ううん、こっちこそごめんな。毎回作り過ぎちゃって。食べ盛りの子がどれくらい食べるもんなのか、まだ分かんなくて」
「全然。……じゃあオレ、部屋に戻るね」
ヘラヘラ笑ってヒラヒラ手を振って。自分の食器は、自分でちゃんと下げて。残ったおかずはラップして冷蔵庫にも入れる。
なんにも問題ないはずだ。
「……本当に足りてるのかしら……」
「大丈夫だよ。顔色も悪くなさそうだし。……オレこそ本当にごめん。ついたくさん作っちゃって……。蒼くんの負担になってるよね」
「そんなこと! いつも本当にありがとう。ごめんね、ずっと食事とか、家事とか……」
「それこそ全然問題ないよ。予定日まで近くなってきたし。体、大事にして」
「……ありがとう」
こんな甘ったるい会話だって、スルー出来てる。恥ずかしいからやめてよ、とか感じ悪いこと言ったりしないし。だって、新婚さんで赤ちゃんまでいるんだからこんなもんだきっと。
肩身が狭いとか、思ったりもしてない。
ただ、――居心地が絶妙に悪いだけだ。
家を飛び出してしまいたい気持ちをグッと堪えて自室に入ったら、ベッドにバフンと飛び込んだ。
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