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彼女を取り巻く環境が変わる事を不安に感じる俺と違って、百花は楽天的。
「こっちは心配でたまんねーのに…」
不満を吐き出す俺に、百花が前を見据えたまま「それは私も一緒だよ」と言う。
「新入生の可愛い子に“せ~んぱ~い”なんてなつかれても鼻の下伸ばしたりしないでよ?」
「はぁ?伸ばすわけねーし」
「ミニスカ穿いた美人教師が担任になってもデレデレしちゃ駄目だからね?」
「しないっての」
「どうだか…可愛い他校生にナンパされてもついてっちゃ駄目だよ?」
「だから、んなわけねーっての」
馬鹿みたいなやり取りで百花が俺と同じように不安を抱えていた事を知り、嬉しくなった。
同時に擽ったくもなった。
「ねぇ、モモー」
「ん?」
沢山の桜が視界に入ってきた。
それと、歩道を歩く大勢の人の姿も。
目的地は近い。
「来年も一緒に花見行こうね」
「まだ会場に着いてない状態で言うの?それ」
混雑する道路を徐行運転で走行しながら駐車場を二人で探す。
「来年はハルの運転で来ようよ」
「マジ?じゃあ、頑張って免許取らないと」
「頑張れー!」
偶々運良く見付けた駐車場にぎこちない動作でゆっくりゆっくり、バック駐車する百花。
無事に停めたのを確認してから、二人で車を降りる。
しっかり手を繋いで歩く先には、沢山の桜の木がトンネルを作りながら待ち構えている。
風に揺られて散る淡いピンク色の花びらは、風情だとか情緒だとか、わびさびとかさっぱり分からないイキったガキの俺にでもキレイだと感想を持たせるから凄い。
「キレイだね、来て良かった」
隣で感動する百花の隣で静かに頷いた。
それからすぐに百花の手を引っ張る。
「よーし、食うぞー!」
「えっ?ハル、桜もっと見ないの?花より団子な感じ?」
前言撤回、春はやっぱり好きだ。
ただし、隣に百花が居る事が絶対条件だけど。
*終わり*
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