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桜が咲いて、散り、三年生になっても悩む日々が続いていた。
内部進学組の俺と、外部受験生になった雅人は別々のクラスになった。
学校帰りに、ひとりで駅のホームに立っていると、「俺も早く大人にならなくちゃ」という焦りと、大好きな人に置いていかれるという孤独感で頭が変になりそうになった。
線路に飛び降りちゃおうかな。
衝動的な考えが一瞬心をよぎる。
そしたら一生、雅人は俺のことを考えてくれる。俺の命日のたびにここへ来て、楽しかった毎日を思い出してくれる。まだ無垢で、将来のこととか世間のこととかなんにも考えずに、遊んでいた日々を思い出してくれる。
そんな妄想が、夢みたいに美しく思えた。
なんとなく線路をのぞきこんだとき、急に通学用のリュックが俺を引き戻した。
「ちょっと! 危ないよ!」
振り返ると、相沢が立っていた。隣の席の女子だ。俺のリュックの肩ひもを握って、引き戻してくれれたようだ。
パアアアッ。
次の瞬間。警笛を鳴らしながら、快速急行がホームを通過していった。
俺は思わずその場にへなへなと座り込んだ。
相沢は横長のスポーツバッグを肩からかけたまま、俺の事を見下ろしている。ショートボブの髪が電車の風で舞い上がっていた。今日はバレーボール部の練習がなかったんだな、と思った。
「なに、ぼーっとしてんの!」
相沢は姉御肌のいつもの口調で俺をたしなめたあと、少し心配そうに続けた。
「あのさ、河合、気になってたんだけどさ。どうして最近柊と帰らなくなったの?」
「……雅人は勉強するっていうから」
視線を泳がせて、もそもそと俺は答える。
「外部受験コースにしたんだっけ?」
「そう。なんか生物学のすごい教授のいる大学に行きたいんだって……」
「ふーん、そっか。河合最近元気ないしさ、喧嘩して別れちゃったのかと思ったよ」
俺は思わず立ち上がった。尻の汚れをはらって、咳払いをした。
「え、なに、別れちゃったって……? そんな、俺らがつきあってたみたいな言い方」
「つきあってたんじゃないの?」
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