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第12話 将来の事(終話)
4月になり新学期が始まった。
クラス替えもあって、樹くんとは同じクラスになり話す時間も増えた。
今井さんとも同じクラスになった。
裏庭に呼び出されてから・・あれから何事も起きていない。
「来年受験か、嫌だなぁ・・」
私は机の上で両手を組んで顎を乗せた。
三年生の教室、上の階に移っただけだけど。
三年一組である。
席は廊下側で、ドアに近い。
今はお昼休みだったりする。
「由美は何処へ行くって決まっているの?」
隣の椅子に座っている、樹くんが聞いてきた。
「特に決まってないかも。あ、そうだ樹くんのお嫁さんとか?」
「ばか」
頭をコツンと軽く叩かれた。
「今日もバカップルだねぇ」
近くにいた、今井さんが話に入ってきた。
「そういえば、今井さんは?」
「わたしはアニメーターやりたいんよ。高校行ったら、美術部行って絵の勉強を・・」
目標をしっかり持ってるって凄いな。
「由美は動物園とか?」
「何で?」
「話せるし」
私は慌てて両手で、樹くんの口を塞いだ。
もごもご言ってるけど無視。
今井さんには言ってないんだってば!
「日下って、動物好きそうだよね~」
適当に誤魔化せたみたいだ。
内緒って言ったのに口軽い・・。
進路・・進路かぁ。
****
私は、今日も部屋でみいちゃんと話をしていた。
『猫カフェ店員とか』(みい)
「ああ、それいいかもね」
毎日猫と一緒にお仕事。
それも良いかもしれない。
「そうすると商業高校の方が良いのかな~?」
「ねえ、お姉ちゃんてさ・・」
ドアの入口にいた由梨が話しかけてきた。
「ん?」
「いや、何でもない」
またバカにしてくるのかと思ったけど、そうではなかったみたいだ。
****
「まさか、ね」
あたしは、お姉ちゃんて・・みいと本当にお話してるの?
なんて聞きそうになってしまった。
何を考えてるんだろう。
バカバカしい。
現実的にありえないじゃない。
でも・・でもなぁ。
にゃーん
みいがあたしの部屋に来た。
珍しい。
「どうしたの?来てくれたんだ?」
尻尾を立てて、すり寄ってくる。
背中をなでると癒されるんだよね。
「今日はこっちで寝ない?」
にゃ~
みいが返事をした。
本当に寝てくれるのかな?
いつもお姉ちゃんの所ばっかりでずるいよね。
あたしは、みいを抱きしめて眠った。
**
由梨はベッドでぐっすりと眠っている。
やれやれ・・。
あまり人間に気を使わなくてもいいとは思うのだけど。
たまには由梨(妹の方)と一緒に寝たほうが良いか。
わたしはそう判断して、由梨のベッドの上にいた。
人間の世界は生きにくいみたいだな。
せめて少しでも楽になると良いのだが。
ベッドから出窓に飛び乗り、カーテンを押しのけて外を見ると、夜空の上空に浮かんだ月が見える。
今日は満月だ。
月明かりはみな平等にもたらされている。
夜の町は寝静まっていた。
わたしは背中を伸ばして、ベッドに降りた。
また、ひと眠りするとしようか。
意識が薄れていく中、夢を見た。
由美が彼氏を家に連れて来て、満面の笑みで話をしている。
もう心配はいらないなと、わたしは夢の中で安堵していた。
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