第2話 マラソン

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第2話 マラソン

「ああ、びっくりした。こんなところで会うなんて」 コンビニを出たところで僕は呟いた。 意外と家が近くなのかもしれない。 日下さんは大人しめな女子で、いつも花壇の所で猫と話をしている。 最近ちょっと気になっている人だ。 ** 家に帰り、妹の早紀に声をかけられる。 「お兄ちゃんスイーツ買ってきてくれた?」 「ああ、うん。買ってきたよ」 早紀に、買ってきたイチゴのカップケーキを渡した。 僕は妹と仲良くやっている。 兄妹仲良すぎと言われているくらいだ。 普通だと思っているのだけど。 仲が悪い兄弟もいるらしくて、人それぞれだろう。 「今日はついてるな」 日下さんと初めて話が出来た。 また話が出来るといいな。 **** 「最悪~散歩するんじゃなかった」 私は家に帰ってうなだれていた。 「え?なにがあったって?知らない男子に声をかけられて・・ああ、爽やかな男子だったよ?背は少し私より高いかな。譲ろうとしてくれてたから親切なんだろうけど・・普通じゃない?」 私はみいちゃんに報告していた。 「え?人見知りを治す、いい機会だって?他人事だと思って・・」 みいちゃんて時々思うんだけど、青い猫型ロボットみたいなんだよね。 便利アイテムなんてものは出せないんだけど。 性格がさ。 「ああ、もう日曜日が終わっちゃう~」 テレビではサザエさんが流れていた。 なんだろうこの虚しさって。 **** 「おはよう~」 「はよ~」 今日は月曜日。 私はいつものように学校へ来ていた。 このクラスになってから友達はいない。 まあ、いなくても死なないから大丈夫だよ。 つまらない日常が、卒業する日まで続いていくものなんだろうな。 後ろの席の窓際の隅っこが私の机だ。 授業が始まるまで、クラスの人たちは思い思いにお喋りをしている。 まあ、スマホあるし時間はつぶせる。 ネットのマンガでも見ようかな。 「ねえ、今日の体育の授業隣のクラスと一緒らしいよ」 「そうなんだ」 へえ~。 私には関係ない。 そういえば昨日の人、隣のクラスって言ってなかったっけ? まあ、会うことも無いか。 ** 「何でマラソンなの?」 私は愚痴をこぼしていた。 4時限目、体育の授業はマラソンだった。 体力が無い私は、いつもビリになる。 女子は短めの距離、男子は眺めの距離を走る。 私はとぼとぼと歩き始めた。 他の生徒も歩き始めている。 走るのが得意ならともかく、私みたいな人には罰ゲームにしかならない。 学校が見えたら走ればいいか。 「マラソンの行事は、秋だったはずなんだけどな」 多分先生が適当に決めたのだろう。 そうに違いない。 「意外だね、真面目そうに見えたのに」 爽やかな声が聞こえてきた。 話しかけられる男子なんているはずが・・。 声のした方を見ると、昨日の島村くんだった。
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