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第6話 バニラ
「この間はどうも」
「こちらこそ」
島村くんと由梨の他人行儀な挨拶が続いていた。
この前、少し電話をした事を話しているらしい。
めちゃくちゃ会話が気になる。
何でだろう?
「あ、由梨っちじゃん」
私たちが廊下にいると、リビングから色白の可愛らしい少女が顔を覗かせた。
「早紀知り合いか?」
「友達だよ~や~どうしたのさ」
早紀は由梨に手を振った。
どうやら島村くんの妹らしい。
由梨は島村くんと私を見る。
「あたしは早紀ちゃんと遊ぶから、そっちはそっちで遊びなよ。ほら、近くにいるしさ」
私は由梨に、ぽんと肩を叩かれた。
「部屋は二階なんだ、猫もそこにいるよ?」
島村くんに促されるまま、階段を上る。
由梨~なんでいなくなるの~。
私は不安で一杯だった。
****
「わあぁ~可愛いね」
私は島村くん家の、白猫のバニラを撫でていた。
思っていたよりも大きかった。
スコティッシュフォールドという種類の猫らしい。
瞳が青くて美人さんだ。
「ふわふわだね」
名前の通り全身の色が、バニラ色でふわふわしている。
毛の量が多いみたい。
まるで、綿あめみたいだと思う。
島村くんは不思議そうに言った。
「日下さんにはすぐ懐くんだな。いつもすぐに逃げるのに・・」
友達を連れてきても、すぐ隠れてしまうそうだ。
見た目に寄らず臆病なのかもしれない。
「そうなの?」
「日下さんは不思議な感じするからかな」
私は、口に出さなくても猫と会話ができる。
実はさっき挨拶をしていたのだけど。
『こんにちは』
『こんにちは。キミは話が出来るんだね!驚いたよ』
『私、日下由美っていうの。今日は遊びに来たのよろしくね』
にゃ~ん
バニラは白くて太い尻尾を振ってぱたぱたさせている。
島村くんが、私を見て微笑んだ。
「日下さん、良かった笑ってくれて。めっちゃ緊張してたよね?」
そういえば・・バニラを触ってから緊張が少し解れたかもしれない。
心配してくれてたのか・・少し悪い事したかな。
「うん。バニラ撫でたら癒されたのかも」
それから、島村くんのお部屋でゲームしたり、お菓子食べたりして楽しんだ。
こんなに楽しいのは、随分久しぶりだった。
心も温かくなった気がする。
****
「ねえねえ早紀、あの二人どう思う?」
あたしは早紀とアニメの映画を見ながら、ポテチを食べていた。
「まだ、お友達とか言ってたね」
「そうそう、姉ちゃん達はそこからだよね~」
「兄ちゃんも人気の割に、奥手だからな~意外とお似合いなのかも」
姉ちゃんたちの話を早紀と喋る。
たまにはこんなのもいいか。
これで友達も、作れるようになるといいけど。
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