3人が本棚に入れています
本棚に追加
第9話 ありがとう
「すっ・・す、凄い!」
島村くんはめちゃくちゃ興奮していた。
「何これ?調教師?チート能力?」
あれ?思っていたのと違う反応だったけど。
取りあえず嫌われてなくて良かった。
私はほっと胸を撫で下ろした。
「し、島村くん?」
島村くんはだいぶ興奮しているようだった。
こちらが素なのだろうか?
ハッとした様子の島村くんは、少し照れて頭を掻いた。
「とにかく無事で良かったよ。何かあったら僕に直ぐに言うんだよ?」
「心配してくれてありがとう」
野良猫がにゃ~んと鳴く。
最初にお礼を言うのを忘れていたよ。
「みんな助けてくれてありがとね」
私は猫とカラスにお礼を言った。
フフッ
島村くんが笑う。
「この子たちがいるから安心だな?」
「こういう事は、もうごめんだよ」
****
今日は長かった気がする。
色々あったからからかな。
家に帰って、ベッドに寝っ転がる。
「疲れた…」
私はいつの間にか寝てしまっていた。
**
『ごめんね』
小学校の頃の夢を見ていた。
友達は何か言いたげな顔をしている。
私から視線を反らして見ないふりをする。
多分ごめんね、って言いたかったのかもしれない。
だけど、○○が怖くて話しかけられない。
話しかけても無視をされる。
あれから私は諦めていた。
あの出来事からだいぶ経っていた。
私、このままじゃ駄目かも。
少しずつ変わっていかないと。
**
「おはよう」
朝、教室へ入る。
勇気を出して声を出してみた。
周りの人たちは驚いている。
私は、今まで何も言わなかったのだから当たり前だよね。
話をしていたクラスメートの会話が途切れた。
シーン。
当然の反応か。
期待してなかったけど。
「はぁ」
私はため息をついた。
**
昼休み、私は島村くんと一緒にいた。
いつもの花壇の前で。
「声かけたんだ、頑張ったね」
「うん・・頑張った」
島村くんが私を受け止めてくれる。
誰かがいるから頑張れる。
島村くんがいてくれて良かった。
「えっと、あの?」
私は戸惑っていた。
島村くんが優しく、私を抱きしめていた。
「辛いでしょ、泣いて良いよ?」
そんな事言われたの初めて。
こんな事で泣く私じゃない。
でも・・。
今までの思いが蘇ってきて目から雫がこぼれた。
「あれ・・おっかしいな・・」
後からあとから涙が溢れてくる。
私悲しかったんだ。
無視されて、辛かったんだ。
クスン・・クスン・・。
私は島村くんの胸の中で泣き続けた。
「もう、無理しなくていいよ」
優しく声をかけられる。
頭を撫でられて私は嗚咽していた。
**
「・・目がやばい」
私は、数分泣き続けた。
泣き終わって、目が腫れぼったくなっている。
ひどい顔だ。
「帰っちゃおうか?」
島村くんは、私の手を引いて学校を出る。
これってサボリ?
午後の授業をエスケープして、私達は学校を抜け出した。
「こんな事初めてだよ」
「僕も!」
悪い事をしているはずなのに、ドキドキするのはどうしてだろう。
すごく楽しくて、ずっと一緒にいたいって思うのは・・・。
最初のコメントを投稿しよう!