第9話 ありがとう

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第9話 ありがとう

「すっ・・す、凄い!」 島村くんはめちゃくちゃ興奮していた。 「何これ?調教師(テイマー)?チート能力?」 あれ?思っていたのと違う反応だったけど。 取りあえず嫌われてなくて良かった。 私はほっと胸を撫で下ろした。 「し、島村くん?」 島村くんはだいぶ興奮しているようだった。 こちらが素なのだろうか? ハッとした様子の島村くんは、少し照れて頭を掻いた。 「とにかく無事で良かったよ。何かあったら僕に直ぐに言うんだよ?」 「心配してくれてありがとう」 野良猫がにゃ~んと鳴く。 最初にお礼を言うのを忘れていたよ。 「みんな助けてくれてありがとね」 私は猫とカラスにお礼を言った。 フフッ 島村くんが笑う。 「この子たちがいるから安心だな?」 「こういう事は、もうごめんだよ」 **** 今日は長かった気がする。 色々あったからからかな。 家に帰って、ベッドに寝っ転がる。 「疲れた…」 私はいつの間にか寝てしまっていた。 ** 『ごめんね』 小学校の頃の夢を見ていた。 友達は何か言いたげな顔をしている。 私から視線を反らして見ないふりをする。 多分ごめんね、って言いたかったのかもしれない。 だけど、○○が怖くて話しかけられない。 話しかけても無視をされる。 あれから私は諦めていた。 あの出来事からだいぶ経っていた。 私、このままじゃ駄目かも。 少しずつ変わっていかないと。 ** 「おはよう」 朝、教室へ入る。 勇気を出して声を出してみた。 周りの人たちは驚いている。 私は、今まで何も言わなかったのだから当たり前だよね。 話をしていたクラスメートの会話が途切れた。 シーン。 当然の反応か。 期待してなかったけど。 「はぁ」 私はため息をついた。 ** 昼休み、私は島村くんと一緒にいた。 いつもの花壇の前で。 「声かけたんだ、頑張ったね」 「うん・・頑張った」 島村くんが私を受け止めてくれる。 誰かがいるから頑張れる。 島村くんがいてくれて良かった。 「えっと、あの?」 私は戸惑っていた。 島村くんが優しく、私を抱きしめていた。 「辛いでしょ、泣いて良いよ?」 そんな事言われたの初めて。 こんな事で泣く私じゃない。 でも・・。 今までの思いが蘇ってきて目から雫がこぼれた。 「あれ・・おっかしいな・・」 後からあとから涙が溢れてくる。 私悲しかったんだ。 無視されて、辛かったんだ。 クスン・・クスン・・。 私は島村くんの胸の中で泣き続けた。 「もう、無理しなくていいよ」 優しく声をかけられる。 頭を撫でられて私は嗚咽していた。 ** 「・・目がやばい」 私は、数分泣き続けた。 泣き終わって、目が腫れぼったくなっている。 ひどい顔だ。 「帰っちゃおうか?」 島村くんは、私の手を引いて学校を出る。 これってサボリ? 午後の授業をエスケープして、私達は学校を抜け出した。 「こんな事初めてだよ」 「僕も!」 悪い事をしているはずなのに、ドキドキするのはどうしてだろう。 すごく楽しくて、ずっと一緒にいたいって思うのは・・・。
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