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7.晴れる
結論は予想以上に早く出た。
翌日、大学生の飯田晋一が、任意で警察署に呼ばれた。
全て、コンビニの防犯カメラに映っていたのだ。
あの日の夕方、コンビニでハイライトと100円ライターを購入。その足でみかん山に登っていくところ。
それから約10分後に降りて来て、駐車場に止めたままの車に乗り込み、出ていくところ。
「案外、あっさり認めましたよ」
中年刑事が、若い刑事を伴い、わざわざ橙子の家まで出向いて説明してくれた。
「じゃあ、落ちていたタバコの空箱も、飯田先生がわざと置いていったんですか?」
応接間で、両親と一緒に説明を聞いていた橙子が尋ねた。一つでも多く、敦史に付けられた汚点を消してあげたかった。
その質問には、若い刑事が答えた。
「そうですね。実は、空箱からは指紋が全く検出されてなかったんですよ」
「えっ……どういうことですか?おかしくないですか?」
橙子が先を促すと、若い刑事も頷いて、
「そう。おかしいんですよ。もし進藤さんの火の不始末だったとすると、彼の指紋が残っていないというのは不自然なんです」
「なるほどね。そりゃそうだ」
父が頷く。
「明らかに、誰かが吹き取った。つまり、進藤さんに罪を着せようとした、ということになります」
「……飯田先生が、ですか?」
「はい。しかも、進藤さんを目撃したと言ってきたのも、飯田容疑者でした。まぁ、目撃したことは事実ですが」
「えっ……」
それには、橙子だけでなく、隣の父と母も驚きの声を上げた。
「なんで、飯田先生は、そんなことを……」
と訊いたのは、母だった。
それには、中年刑事が厳しい表情になって、
「嫉妬してたようです。進藤さんに」
はっとする橙子。自分と敦史のことだけで精一杯で、飯田の気持ちなど考えたこともなかったから。
改めて振り返れば、飯田の自分を見る目、そして言葉に、若干おかしいと感じるところはあったのだ。
「あ、それからですね」
と、中年刑事が続けて、
「あなたは昨日、仰ってましたよね。タバコは絶対止めると、あなたに誓ったと」
「はい」
「実はね、火事があった日、目撃情報をもらって、すぐに進藤さんに事情を聞きに行ったんです。その時、彼も同じこと言ってました。『俺はタバコは絶対止めると、彼女に誓ったんだ。だから、絶対に俺じゃない』ってね」
「そうだったんですか?なら、なぜすぐに私に訊いてくれなかったんですか?」
思わず詰めよるような口調の橙子に、中年刑事は、一度視線を両親に向けてから、
「いいんですか?」
と、橙子に訊いた。
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