9.エピローグ

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9.エピローグ

 再会から10年が過ぎた、今日、2024年11月20日。  橙子と敦史の二人の喫茶店が、ついにオープンする。  それまで二人が一生懸命に働いて貯めたお金に、亡くなった敦史の父の保険金も合わせ、開店資金にした。  中学生の頃は、敦史との付き合いに猛反対だった橙子の父も、それ以降の敦史の生き様を知り、一定の信頼を寄せてくれるようになり、東屋のあった土地を貸してくれたのだ。  今、朝8時。 「二人だけの秘密の場所も、あと二時間かぁ……」  敦史が、感慨深げに窓からの景色を眺める。  10時の開店を前に、準備がひと段落。カウンターに並んで腰かけながら、ひと休み中だ。  厨房の壁の上の方に、敦史の父、そして、橙子の両親の笑顔の写真が掲げられている。 「開店できたのは、敦史くんのお父さんのおかげもあるから」  そう思っていた橙子は、感謝の気持ちを表したくて提案したのだ。  すると、彼もこう言ってくれた。 「それなら、橙子のご両親も、快くこの場所を貸してくれたから」  それならばと、3人の写真を掲げることにしたのだった。 「これからは、私たち家族と、お店に来てくれたお客さんたちみんなの幸せの場所になるといいね」 「そうだな」  橙子と敦史は、お互いを愛おしむように見つめ合い、微笑み合った。          (完)
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