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滝川さんは大学の研究室に行ってしまったので、家主のいない家で昼過ぎまで爆睡した。
起きて、滝川さんが入れてくれた白湯を温め直してゆっくりと飲み、買い置きの鉄分ゼリーを食べ、鎮痛剤を飲んでしばらくすると、辛い感じはいくらかマシになってきた。
<3コマまでサボっちゃったな>
2コマ目はあたし一人しか取っていない講義なので、勝手に休もうが自分が困るだけだが、3コマ目は美織と一緒に取っている講義なので、講義が始まる前にベッドの中で「代返お願いします」とLINEで美織に連絡していた。
枕元に置いたままだったスマホを見ると、美織からLINEが来ていた。
――『大丈夫ー?なんか差し入れしよか?』
一人だったら鉄分ヨーグルト片手にフラフラでも大学に行っているところだが、今朝は滝川さんに甘えてしまった。生理で休むことがあまりないせいで、美織もいつも以上に心配してくれているのだ。
やや罪悪感を覚えながら、『全然大丈夫!寝たら元気になってきた。夜はバイト行くよ』と返信を打つ。既読はすぐについて返事が返ってくる。
――『あんまり無理しないようにね。明日は出てこれそ?悠乃がご飯食べたいって』
そういえば、最近大学で鷺原さんに会っていない。元々学部が違うので、サークルも一緒じゃないあたしは、予定を合わさないと会えない関係ではあるけど。
もちろんです!とスタンプ付きで返すと、ややテンションの低い返事。
――『なんか深刻な話みたいよ。稲村さんのことかもね』
「………」
数週間前、栞と4人でランチをした時に鷺原さんが話していた内容が蘇る。インターンで仲良くなった同期と毎週末遊んでいるとか。そこに、鷺原さんも混ぜて貰えばいい、という話で悩みは解決したと思っていたけれど。
<混ぜて貰えなかったのかな?それともまた別の話かな…>
自分が彼氏と怖いくらいに順調であっても、友達のこういう話は一気に冷静さを取り戻す。妙な胃痛を感じながら、『何時間でも付き合うよ』と返信した。
他人のあたしが今からあれこれ考えても意味がないのに、気になってもやもやと考えてしまう。鷺原さんがどういう心境でいるかも心配だ。
ぼんやりとLINEのトーク一覧を見ながら、鷺原さんに何かメッセージを送ろうかと悩んだけれど、何も聞いていない今はどういうテンションで送ったらいいか分からず、結局そのまま家でごろごろしているうちに、あっという間にバイトの時間になってしまった。
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