2- setting

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「つかさ、今日大変だったな」  バイト終わりに、いつものように稜平と近くのご飯屋で遅い晩御飯を食べた。  稜平はあたしが叱られている最中、外出でいなかったが、その後帰ってきて事務所で他の社員から顛末を聞いたらしい。中森さんはもちろん、店長も社員さんも物凄く御礼を言ってくれたが、あまりうまく対応できなかったので、労われるとそれはそれで心苦しい。 「ううん、全然。何にも出来なかったし」 「そんなことないだろ。つかさが話を聞いててくれたおかげで、あのおじさん事務所で早めに落ち着いたらしいぜ」 「それは店長がまろやかに対応してたから…」  クレーム対応をしてみて、やはり経験を積んだ安定感のある社会人男性というのは、それだけで武器だなと思う。年配の男性には「年下」「女子」というだけで舐められる。明らかに経験値が足りてないから。  <…悔しいな> 「そう落ち込むなって。つかさの対応が間違ってなかったことは確かなんだから」  視線を落としてばかりのあたしの頭に、ぽんぽんと稜平の優しい手が載った。  その手があまりに優しくて、思わず顔を上げると、正面にもっと優しい笑顔を浮かべた稜平がこちらを見つめていた。 「初めてだったんだろ?普通、初めてならビビッて店長の電話が終わるまで待つよ。それを待たずに自分でどうにかしようと前に出たのがすごいよ。俺はその勇気に感動した!」  最後を茶化すように言うので、思わずふっと笑ってしまう。  あたしがやっと笑ったので、稜平が向日葵みたいに大きくニコニコ笑った。 「そーそー。笑ってなって。そのおっさんだってもう今日の事忘れて酒飲んで寝てると思うぜ」 「ぷ。お酒飲んで寝てるんだ」 「そんなもんだぜ、おっさんなんて。明日には言った事半分も覚えてないよ」  あまりの言いように、あたしはクスクスと笑った。  稜平の、あたしを元気づけようとしてくれる優しさが嬉しい。稜平らしい言葉で、笑わせてくれる。だから好きなんだと思う。 「…ありがと、稜平さん」 「全然。つかさが笑うまで、俺は笑わせるまでよ」  <…誰のものにもなってほしくないなぁ>  笑ってフォークでサラダをつつきながら、そんなことを思う。  コンパなんて本当は行ってほしくない。誰か特定の女の子を、特別な目で見て欲しくない。  もし、誰かのものになってしまうくらいなら、――あたしが彼女になりたい。  稜平に対して、その時ハッキリとした独占欲を持ってしまった。  美織の顔が脳裏に浮かんできて、あたしは静かに、小さくため息を吐いた。
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